BLことはじめ

「BLことはじめ」とは朝日新聞社の好書好日で入門者に向けて、さまざまな切り口でおすすめのBL本を紹介する連載だ。今回は好書好日×honto連載1周年として行なわれたダヨオ先生のトークショーについてレポートする。

イベント概要

日程:2019年11月23日(土)
時間:開場12:30 / 開演13:00
料金:¥801
会場:DNPプラザ2Fイベントホール
定員:約100名
出演:ダヨオ先生(@dayowashlets)           
        担当編集鹿さん(@sikadaisuki)
        I上さん(@honto_bl)
        キヅイタラフダンシーさん
進行:岩本さん

今回のイベントは2019.10.12に開催予定だったが、台風のため2019.11.23に延期開催となった。 

 

 I上さんとキヅイタラフダンシーさんはBLことはじめを担当している。2人とも仕事をきっかけにBLに足を踏み入れ、今では立派な腐男子になったそうだ。まずはそんな2人の軽い自己紹介から。

I上さん
 → 腐男子歴6年。笑顔が素敵なキャラ、表情で魅せてくれる作品が好き。
キヅイタラフダンシーさん
 → 腐男子歴10年。ヤンキー、おじさんキャラが好き。
        ほだされてラブラブになる展開好き。


続いてダヨオさんからの挨拶。ダヨオさんはトークイベントが初めてで緊張していたようで、イベント前にアガラン錠を飲んだと言ってました。そして一回台風で延期になってしまったけど、皆さんに会えて嬉しいと挨拶されてました。
ダヨオさんの服装はピンク(マゼンダ)地でラインが黒のシャツワンピでした。可愛かった。

ダヨオ先生の萌え遍歴

SLAM DUNK / 井上雄彦

はじめてキャラ萌えを感じた作品がスラムダンク。 スラムダンク自体は母親が好きで漫画も見ていたし、セーラームーンの後にやっていてアニメも見ていた。 友達がテニプリにハマっていてダヨオさんはテニプリは知らなかったが、絵の上手い人の漫画を読みたくて同人誌を借りて読んでいた。そのため二次でそういう世界があることは知っていたけど、その時はキャラ同士の組み合わせに尊さを感じる感覚はわかっていなかった。
キャラ萌えを感じたのは高2の時。スラムダンクを読み返したら落ちた。 三井が好き。 三井の好きシーンで萌えポイントはゴリ宅で勉強会をやっている時に 母親に遅くなるって電話かけてることころ。いい子! と思った。推しにはお小遣いあげたいし、おばあちゃんになりたい。
リョータと三井さんのカップリングにハマっていたので三井のことは三井さん呼び。ハマり方は思い出せないが、ハマった時の記憶がなくハマったものほどヤバい。 落ちるってこういうこと。人生を変える。 

Amazonプライム会員なら現在アニメの1stシーズンは視聴が可能だ。

おそるべしっっ!!! 音無可憐さん / 鈴木由美子

執着萌えに目覚めたのがおそるべしっっ!!! 音無可憐さん。 ドラマ版にハマっていた。 原作はギャグ寄りだがドラマ版は音無可憐の武田軍司への恋に焦点があたっていた。しつこい片思いが好き。執着萌えの原点。 好きの気持ちが大きいほど楽しい。


イルミナシオン / ヤマシタトモコ

はじめて読んだ商業BLがイルミナシオン。 大きな事件が起きるわけではないのに心理描写で読ませるのがすごい!と漫画家としての目線でも語っていました。

Q収録されている三編のうちどれが好きか
テイストが違うがどれも美しいシーンがある。選べない。

Q作品を読む時にキャラクター目線か
読む時は壁。苦しむ受けと攻めが見たい。 好きの度合いが大きいほどテンションが上がる。推してたキャラがくっついた時は 「付き合った!!」て書いたプラカード持って回りたい。

イルミナシオンを貸してくれた友達とヤマシタトモコさんの10周年のトークイベントで再会。 このエピソードはヤマシタトモコさんの特集したonBLUEに寄稿している漫画で読むことができるので 気になる方はonBLEをチェック!


 

ダヨオ先生の創作裏話

Q.作品作りはどのように取り組んでいるのか

キャラクター先行。 動き回っているキャラクターたちが何人もいる。 いくつか会話しているキャラクターがいて 担当さんと話をしながら描けそうな子を描く。

言葉選びにはかなり拘っているようで、そのシーンにはこれじゃなきゃってものを選びたいので慎重。 曲の歌詞など響くものがあるとメモしている。 

Q.ロンリープレイグラウンドのキャラクターにモデルはいるか

モデルというにはおこがましいんですがって前置きしつつ...... 下記が近い感じになればいいなっていう各キャラのモデルというかイメージ。

慧介 → 鈴●伸之

雪文 → 荒●慶彦

雨津木 → 堀●圭亮

針間 → 特になし。
K-POP風似合いそう。タートルネックとか。

 

あらまっきーの補足コメ>
ダヨオさんがTwitterで見た天王洲アイルの前でスーツ着た写メの 佇まいがスーツでリーマンぽいのにリーマンじゃないところと言っていたので探しました。ポーズも一致しているのでコレだ!

Q.どうやったらダヨオ先生みたいに絵が上手に描けますか  

実際自分が描いてきた中で、私は絵が上手い、いい線が描けると思って描く方がいいものが描ける。  なんで描けないんだろうとか自分を責めずに描くといい絵が描ける。

Q.これまでの作品で動かしやすいキャタクター、動かし難いキャラクターは誰か

友人が少なそうなキャラ。1人でいるキャラは必然とモノローグが生まれる。 相手に迷惑をかけまくる人、現実で関わりたくない人にテンション上がる。 逆に雪文は言っていることと行動が違うので、葛藤を表現するのが難しかった。 

Q.第一話、物語の最初を描くにあたってのこだわり

一番悩む。説明しすぎず、でも伝わるように。

Q.作品を描くには集中力が必要と思うがダヨオ先生の集中法は?

休む。寝る。睡眠は一番大事。 思いついたことはすぐ書けるようにしている。 作業中の気分転換は夜。20時とか21時くらいに外を歩きまくる(だから夜のシーンが多いのかも)特に夜型ではなく完全に朝型。 一度身体を壊していて、本当に辛かったから健康大事。
喫茶店でボーッとコーヒーをかき混ぜるのも気分転換になる。 ネームのできる喫茶店リストなるものがある。 とっておきのお店(一番はかどるところ)が無くなってしまった。

補足>
この質問の時に質問メモする的なことを言っていたんですが、 これは他の漫画家さんの話を聞いた時も似たようなこと話していていました。 その方はネームに詰まった時はキャラにインタビューをすると自分が思っていなかったことをキャラクターが言いだしたりして話が進みはじめると言っていました。 同業さんから勧められたってその方も言っていたので創作には良い手法なのかもしれない。
ネームのできる喫茶店で一番ネームのはかどるジンクスがあったお店はタリーズだった。次点はCafe Miyama。ロンリーはほぼ自宅で作業されていたようですが、昔は編集部でネームをやったりしていた。 onBLUEの編集部で鍋食べさせてもらったこともあるようです。 ダヨオさん曰くonBLUE編集部は罪人(原稿が進んでない)にもご飯をくれる優しい人たち^^

ロンリープレイグラウンド編

Q.三角関係や調教、明確な闇属性の登場人物などの要素を変えて作品を描かれたきっかけはあるか。 また前作と雰囲気が違うが前作になかった苦労は?

前作とは全然違うものを描いてください、とのオーダーだった。 はじめ幼馴染の再会ものを描く予定だったが、一話でその二人がSEXできなかった。 どうしても一話でSEXさせなければいけなかったが、レイプものは描きたくない。 相談した結果スパダリ攻めで、受けが攻めのラブラブシャワーを浴びて自分を取り戻していく話になった。前作と違う話を描くにあたって今まで読んだことない漫画や映画を見た。 引き出しにないものは出ないので、積み上げるしかない。

縛りからの解放→「お嬢さん」

補足>
ここで前作と違うものを、とオーダーしたK川さんの思いとして ダヨオさんは才能のある人だから長く漫画を描いていって欲しい。 同じようなものを描くと、それを次回も求められる。 5年6年目も一辺倒なものを求められる作家にはしたくないとお話されていました。

ダヨオさんは普段から映画はよく見るそうです。

ダヨオさんが今年見た映画

神と共に

 

アベンジャーズエンドゲーム

 

今年ではないけど近年ベスト3に入る映画

タクシー運転手

 

ダヨオさんとK川さんは映画見てから打ち合わせすることもあったそうで、 オーシャンズ8見てからした打ち合わせは最高に盛り上がった。  描いていて楽しかったシーンは大ゴマ、ゴム買いに言ってテレたりそういったちまちましたシーン。 可愛い状況にしたい。 自分が萌えないシーンは不安。

Q.ダヨオさんの作品を通して印象的なのが香り。慧介が雪文のために買ったレモンの香りのシャンプー、雨津木の香水、そこは意図して描いたのか

絵柄は地味なので香水など香りや食べ物など五感にうったえるもの、 YOUNG GOOD BOYFRIENDでは時計など印象的なアイテムを出そうとしている。雨津木の香水のモデルはサンタ・マリア・ノヴェッラ(シチリアレモンの香り) 慧介が買ったシャンプーは自分が(薬局で)買えるちょっと高めのシャンプー。 このシャンプーは特にモデルはない。 値段と思いの差。

Q針間に雨津木は足までいい香りと言われていたがどんな香水の香りか
ウッディで重い香り。そこにちょっとフローラルが足されると抱かれろって思う。雨津木は香水足首につけてるから足までいい香り。

Q.それぞれのキャラクター設定について

慧介 → 元々ヘタレ攻めだったのをスパダリに作り変えた。
雪文 → パッと見は地味。でも付き合っていると可愛い。
雨津木 → 父の会社を継ぐために抑圧された環境で育つ。
      正しく継ぐと書いて正継。
針間 → 辛いもの好き。
                   プルダックポックンミョンとか昼休みに雨津木見ながら食べてる。

불닭볶음면(プルダックポックンミョン)は韓国の激辛ラーメン。

補足>
この質問の時には書店に配布されたK川さんが書いた相関図(※)が映し出されていたんですが 相関図には針間がいなかったので今回足されていました。 その足された針間が、雨津木のスーツを勝手に着てるシーン(★)の針間でちょっと騒ついていた。 岩本さんのチョイスだったようです ※相関図は下記Tweet参照


★下巻の悪人の縛り方の29P右上のコマ「あ スイマセン ちょっと 着てみたくて」

Qロンリーのキャラクターも誕生日は考えているのか
今回は設定していない。 でも雪文は冬。クリスマスとか。 お気に入りのシーンは上巻のラスト。お風呂の告白シーンはこだわった。

補足>
”エロいけどモラルをアップデートさせてエンターテイメントを成立させるのは難しい” という言葉からも、振り切った方がフィクションとして簡単にエンターテイメント性が高くなるんだろうとは思う。 そして長い間固定された価値観を覆すのは簡単ではない。 でもそこを光の攻めが受けの手を取って引き戻す、そのシンプルな力強さ。 モラルをアップデートしたエンターテイメントが成立している美しい告白シーンでした。

Q.上巻3話のラストで雪文が慧介のタバコを咥えているシーンがあるが、  あの時雪文は何を考えているのか

雨津木に飼われる前はこんな部屋にいたな、と思い出していた。 モノローグを入れようと思ったが、スピード感を出すためにしんみりするものを削った。

補足>
どの話からの流れか定かではないのだけど、針間の「よくできました 120点あげます」とかの台詞から家庭教師のバイトでもしてるんですかって質問が出ていて会場がザワっとしたのが面白かった。 ダヨオさんもそれを聞いてアリです、針間はいろいろ掛け持ちしてそうって言ってました。 おじさんブチ犯してる人が家でいい先生しているとか最低で最高!

 

Q.一番好きなシーン(こだわりのキス) ※ここで4シーンくらいキスシーンが表示されていた。

二人のキスは飴とムチの飴。 帰り際のキスは光の攻め感が出ていていい。 下巻6話の昼休みに我慢できなくなって中華料理屋まで行って雪文から慧介にキスしたシーン。 →受けからのキスはいい。虐げられてきた人が欲しいものを掴んだ。  ロンリーの続きについては頭の中にはある。

Q.これからチャレンジしてみたいテーマは?

悪人の縛り方を描いて悪い奴描くのが楽しかった。 (悪人の縛り方を描く際”悪の限りを尽くしてやるぜ”ってK川さんにLINEを送っていた)
仏教校だったからお坊さんとか、おじさん夫婦の話とか。 外国舞台の作品もやりたい。取材(旅行)に行きたい。 フランスのケーキ職人。 食べ物の絵を描くのが好き。クリームソーダ、ケーキとかカラフルで可愛いもの。 

 このツイートで悪人の続編を期待した読者も多いはず。

好きな食べ物(肉以外で) ・カレー ・汁なし担々麺 ・コーヒー ・ケーキ 

教えてダヨオ先生

Q.好きなシチュエーション、受け攻めの好みの傾向

太陽×月 強烈な片思い

Q他の漫画家さんの漫画読むのか
碗島子さん。ギャグ・エロ・萌えのバランスが素晴らしい。 ギャグ、笑える漫画描きたい。

補足>
K川さんがギャグ漫画を描きたいというダヨオさんの話を受けて、 先ほどの外国の話にしても外まで届くもの(※)をプレゼンされたらGOを出す。 描きたいものを描いても売れなければ漫画家として生きていけないので 編集はそのバランスも考えている。
※的の中心から内側の円をダヨオさんのファンとして、その外側のファンじゃない層にも一定は刺さるであろうところ

Q.作業中のBGM

The Radio Dept(スウェーデンのバンド) 普段は無音。

 
眠い時はB'zの愛のままにわがままに僕は君だけを傷つけないを流していた。
『愛のままにわがままに僕は君だけを傷つけない』ですよ!?

慧介のテーマ。ゴールデンボンバーの「元カレ殺ス」 カラオケで歌って欲しい。
(曲は1分20秒くらいから↓) 

Q.行きたい国

行ける期間や気候による。 初心者にオススメのアジア圏以外の海外はフィンランド。 直行便もでている。 ヘルシンキはコンパクトな街で逆三角形でまわりが海だから方向音痴に優しい。 フィンランド好き。行くとホッとする。 旅行行くと脳がリフレッシュしてネームがはやくなる。この前の旅行で香水を買った。 香水の香りで旅のこと思い出してリフレッシュできる。 クセのある香りが好き。ジンジャーとかスパイシーな香り。

Q.旅先でインスピレーションを得たりするのか

旅行は作品のためというよりは自分のケアのため。 余裕のある日程ならやる。 ベルサイユ宮殿のカーテンの色使いがよかったので作品に活かしたい。


Q.ハマっているもの

【Netflix】

www.netflix.com

クィア・アイ

www.netflix.com

ル・ポールのドラァグ・レース

https://www.netflix.com/jp/title/70281562

ブルックリン・ナイン-ナイン

Hulu

www.hulu.jp

侍女の物語

番組の情報は友人から。

アンティコカフェのババナチュラーレにハマっている。 食べたいものを食べに行くのもリフレッシュ。 

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ババナチュラーレ

Q.休みの日は何をしているのか

スーパー銭湯と映画。 スーパー銭湯はジェットバスからのサウナor岩盤浴。でも原稿期間中は中々行けない。

補足>

K川さん曰くダヨオさんはネームは迷われるそうですが、原稿は早い。 K川さん曰くダヨオさんは作画早い。予定通りやる。真面目。 今日もこのトークショーに来るにあたって仕事が日をまたがないように上げてきた。



原稿期間は集中して解放されたい。 罪人じゃなくなったら清々と映画に行く。 まだやっていればハイローとジョーカーをみたい。

ここでダヨオさんとK川さんから参加者への逆質問が。
執着萌えの人→挙手した人大多数
攻め厨か受け厨か→受け厨の方が多かった


Q演出で一番繋ぎを悩んだ回

上巻ラスト。目標点が高くて悩んだ。台詞の組み方とか。

補足>
onBLUE編集部のももんがCさんが攻め厨らしく、攻めは攻めで完結すればいい派のようで雨津木さんがジャケットの中にチョッキ着てるところとかSなとこお気に入りだったんですが、どうも雨津木さんが”ああなる”らしいという噂を聞き旗色が悪くなるのを感じていく話が面白かった。

 

最後に

イベントの最後に先日(11/15)誕生日を迎えたダヨオさんにお花のプレゼント。挨拶では来場とお花を送ってくれた方のお礼を言ってました。どの質問にも本当に真摯に答えようとしてくれてるのが伝わってきて、ダヨオさんの真面目で誠実さが出てるイベントでした。是非イベントの内容を知った上で再度ロンリープレイグラウンドを読み返したい。 

 

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ダヨオさんの著書一覧

ロンリープレイグラウンド(下)【電子限定特典付】 

 

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